sweet things


小さな拳がまるで縋るように、糊のきいたシーツを握り締めている。
ベッドサイドのアンティークなフロアランプが控えめな光量で仰臥する白い裸体を照らす。大きく両の脚を広げられ、曝け出した秘所では男の舌が蠢いている。
「ベルナドット、さ・・・・・」
甘さを大量に含んだ呼びかけに、ベルナドットは全く取り合う様子を見せない。その舌はただ淫らな水音をたて続ける。
身を起こそうとセラスが右肘をついたその時、ベルナドットはすっかりと充血したクリトリスを唇に挟み込んだ。
じゅうと吸い上げる音に、音になるかならないかの細い悲鳴が重なる。
シーツを握る左の拳がわなわなと震え、起こしかけた身体は再びベッドに沈んだ。
ベルナドットは、濡れそぼった秘所に軽く口づけると、ようやく秘所から唇を離し、女の体液と自らの唾液で濡れた口元を手の甲で乱暴に拭った。
手のひらに吸い付くように馴染む内腿をつるりと撫ぜ、ニヤと笑うと、その手で再び秘所を開いた。柔らかなその表面はひくひくと上下し、女の内部で続いている収縮をベルナドットの指先に如実に伝えた。
「ベルナドット・・・さぁん」
泣き出しそうな抗議の声をセラスがあげた。
一体どの位の間、舌だけで責められているのか、もう分からない。幾度も絶頂に導かれ、けれど、その度にもどかしい感覚が身体の奥深くに降り積もっていく。
セラスの手はいつの間にかシーツから離れ、自らの下腹部に乗っていた。その指先は、無意識のうちに滑らかな肌を幾度も掻いていた。まるで体内で蠢く感覚を取り出そうとするかのように。
「もう・・・・私・・・・もう」
「もう・・・何だ?」
意地悪く笑ってみせたベルナドットは、その場に身を起こして胡坐をかく。
隆々と天を向く男性器がその目に入り、セラスは慌てたように視線を逸らす。幾度交わっても全く変わらない初心な様子が愛しくてならない。
だからこそ―――
「ちゃんと言わねぇと分かんねぇだろ? 嬢ちゃん」
上気した顔がベルナドットを見上げる。躊躇いがちに開いた唇は、言葉を紡ぎ出す前に萎むように閉じてしまった。
優しさの中に揶揄を含んだ口調で、ベルナドットは口の端を持ち上げる。
「言ってみな。どうしたいのか」
不意に伸びた指が、セラスの秘唇に侵入した。
「や、あぁっ!?」
ぐっしょりと濡れた入口付近を、ベルナドットは指先で浅く掻き回す。蕩ける肉の感触に、猛りそうな己を抑える為に、ベルナドットは気づかれぬように一つ息を吐いた。
「どう、したい?」
セラスの指は、知らず己の下腹部を掻き続けている。指先の動きは、まるで自慰のようなそれだった。
手のひらの下、身体の中の疼きを止めることができない。
叫びだしそうなほどの切なさを止める術を、身体が知っている。知ってしまっているからこそ、尚、疼く。
絡みついてくる肉の感触を惜しみながら、ベルナドットは指を引き抜く。その心を代弁するかのように、粘る体液が長く銀の糸を引いた。
その手を差し出しながら、ベルナドットは口を開く。
「言いな」
「・・・あ・・・・あぁ・・・・」
大きな手のひらに、セラスは震える手を重ねる。
堕ちていく感覚とともに口を開いたのと、強い力で引き起こされたのは、ほぼ同時だった。
「もう、ダメ・・・・欲しいの・・・」
セラスの腕がベルナドットの首に絡みつく。汗ばんだ柔らかな身体が音もなくベルナドットの胸板に密着し、微かな囁き声がその耳を甘く溶かす。
「・・・・ベルナドットさん・・・・挿れて」
ずしりと重い痺れと、抑えがたいほどの熱が、腰から全身に広がっていく。
「来な」
細い腰を両手で掴み、ベルナドットは胡坐の中心へセラスを導く。

今まで出会った女達が口にしたどんな睦言よりも、どうして、この小娘の他愛のない一言が己を昂ぶらせるのか。
男慣れしていない女を弄ぶことで得られる嗜虐的な雄の悦びか。
或いは、人を遥かに凌駕する存在を意のままにすることで得られる優越感か。
脳裏をよぎる疑問に答えを探すことを、ベルナドットはすぐに放棄した。
先端にぬかるんだ入口を感じると、ベルナドットはセラスの身体から手を離した。
「後は、分かるだろう?」
そう言ってベルナドットはセラスに悪戯な笑みを向ける。
「好きなように動いてみな」
その言葉に、セラスは戸惑いを顕わにベルナドットを見つめる。困ったようなその顔が、笑ってしまうほどに愛らしい。
これだから苛めたくなっちまうんだよな。
どんな理屈を並べてみても、行き着く結論なんてのは極々単純なものだ。
切なげな表情で腰を落としていくセラスを前に、 微かな苦笑を閃かせ、ベルナドットはどこまでも甘く己を狂わせる身体にのめり込んでいった。