baby face
浅い息遣いが絶えることなく男の胸にぶつかり、弾けて消える。
ベッドの上で裸のまま胡坐をかく男の腿には、汗以外の何一つ身につけていない女が向かい合う格好で腰を下ろしている。その身体の中心には、体液に塗れた陰茎が深々と突き刺さっている。
目の前で身悶える身体を抱え込むように、ベルナドットは両腕をセラスの尻にまわした。
柔らかな尻を両手で引き上げては、重力に任せて落とす。セラスの中から滲み出る液体は、ベルナドットの陰茎を伝い落ち、幾度も繰り返すその動きに卑猥な音をたてた。
「・・・う・・・・く・・・ふ、う・・・」
ベルナドットの胸板に両手をあてがい、セラスは小さな呻き声をあげて身を捩る。
目をきつく閉じた顔を見つめ、ベルナドットは手の動きを止める。
「・・・キツいか? 嬢ちゃん」
男を知って間もない身体とは知りつつも、気づけば、貪り尽くしたくなる欲望に引きずられている。これまでどんな女にも感じたことのない度し難さに内心で苦笑を浮かべながら、ベルナドットはセラスの喉から顎を指先で撫ぜた。
不意に動きを止めたベルナドットの前で、セラスはゆっくりと目を開く。血の色にけぶる瞳の、その際には透明な涙が今にも落ちそうな様子で震えている。
ベルナドットの大きな手のひらがセラスの頬を包む。その指先が目尻に触れれば、涙の雫は男の指を静かに濡らした。
セラスは己の頬をベルナドットの手のひらに擦りつけるようにして、小さく顔を左右に振った。
「平気、だから・・・・止めないで、くださっ・・・・・・っ!!」
最後まで言わせず、ベルナドットは思い切り腰を突き上げ、セラスの中を抉る。
目を伏せ、羞恥心に耐えながら続きをせがむその姿は、ベルナドットの中の雄を否応もなく昂ぶらせた。
胸に押し当てられた華奢な指先が、何かに縋るようにベルナドットの肌を掻く。
「あぁ・・・ベルナ、ドット・・・さん・・・・ん、あ・・・」
赤みを増した瞳が快楽に歪む。
常には幼さすら感じさせるこの娘が、こんなにも女の顔を見せることを、自分だけが知っている。
この世の全ての男に対する優越感は、抑えがたい独占欲へと形を変え、ベルナドットの身体に変調をもたらした。
やべぇ――
唐突に湧き上がった射精感を抑えることはどうにもできそうになかった。
「悪ィな、嬢ちゃん。ギブアップだ」
大きく息を吐くと、ベルナドットはセラスに苦笑を向け、その腰を両手で掴み、引き上げようとした。
「・・・・や、あ」
切れ切れの呟きと共に、セラスはベルナドットの腕を押さえた。それと同時に、セラスの両脚はベルナドットの腰に絡んだ。
「抜いちゃ、や・・・・も、少し・・・だけ・・・・」
熱に浮かされたような呟きと共に、セラスは脚でベルナドットの腰を引き寄せる。限界に近い中、ベルナドットは更に深く招き入れられる。
「馬鹿、ヤロ・・・・お前っ!!」
この誘惑に耐えられるものが果たしているだろうか。
低く呻いたベルナドットは、引き剥がす為に掴んだセラスの腰を、思い切り引き寄せる。身体の最奥を抉じ開けられるような衝撃に、セラスがその喉を大きく反らせた。
ぴたりと密着した肌と肌。それでも飽き足らぬように、ベルナドットは何度も腰を突き上げる。
ベルナドットの先端が、何度も奥の壁を擦り上げるように当たっては離れる。
「・・・ひ、う・・・・ベルっ・・・奥・・・が、ぁん・・・っ!」
セラスの口から出る音は、最早言葉を為さない。震える手がベルナドットの胸で、きつく拳を握る。
ガクガクと自らとセラスの身体を揺すっていたベルナドットが、不意にセラスの小さな肩に額をつける。
「もう、出す、ぞ」
大きく荒げた息の中で、切羽詰った口調がセラスに限界を伝える。
一際強くセラスを引き寄せ、ベルナドットは女の最も奥に精を放った。
ほぼ同時に、痙攣する二つの身体。ベルナドットの背中から流れてきた長いおさげが、それまでの行為の激しさとは裏腹に、優しくセラスの身体を撫ぜた。
「こら、いつの間にんな悪い女になったんだ? 嬢ちゃん」
身体を繋げたままで、くたりと己の胸に倒れ込むセラスの重みを愛しく感じながら、ベルナドットはセラスの額を優しく小突く。
顔を上げたセラスが何事か言おうとするのを遮り、ベルナドットは言葉を続ける。
「すっかり男の味覚えちまって」
揶揄するような口調でそう言うと、唇の端を持ち上げる。そんなベルナドットを見上げ、セラスは顔を真赤にして口ごもると、すぐに俯いた。
「そういやよ・・・・」
抱えたセラスの頭の上に顎を乗せて、ベルナドットは神妙な顔を作った。
「遠慮なく出しちまったけど、大丈夫なのか?」
「大丈夫です・・・・きっと」
ベルナドットの胸に額をつけたまま、セラスがどこか言いづらそうに言葉を紡ぐ。
「・・・・ないんです・・・アレ」
「・・・・アレ?」
聞き返してくるベルナドットの声に、セラスは頬を膨らませる。
「・・・・・・・・・その辺は察して下さい」
「察してって・・・・・おいっ!!」
アレの正体に思い当たったベルナドットが目を剥く。
いや、ちょっと待て。そりゃ、前にも中で出しちまったこたァあるけどよ。
「もうできたのか? 嬢ちゃん!!」
予想外の言葉に今度はセラスが目を剥く。
「違いますってばっっ!!!」
セラスは、手近にあったおさげを思わず引っ掴む。
「いでででででっ!!」
喚くベルナドットの顔を至近距離で軽く睨むと、セラスはおさげから手を離し、口を開く。
「この身体になってから、無くなったってコトです!!」
「あ? そなの?」
拍子抜けしたようなその顔に、セラスも小さな笑みを向けた。
「変な話ですよね。汗もかくし涙も、血も出るのに・・・・・」
静かな笑みにはどこか儚さが感じられる。
「私の身体は、もう時を止めてしまったんですね」
ベルナドットはセラスの頭を抱えると、くしゃりとその髪を撫ぜた。
あの一瞬に、脳裏に浮かんだ光景がある。
明るい髪をした子供が、燦々と降る陽光の下で駆け回る。
その傍らには笑顔のセラスと、木陰に寝転ぶ自分。
それは他愛のない、そして永遠に叶うことのない光景。
だが、それを思い描いた自分にベルナドットは驚いていた。
人殺しの血脈。ロクでもない家系。それを繋ぐことには何の興味もなかった筈なのに。
ベルナドットは声なく笑う。
全く。このお嬢ちゃんには、自分の意外な面を認識させられてばかりだ。
「ま、この先どうなるかは分からんぜ?」
ベルナドットの言葉にセラスは顔を上げ、首を捻る。
「ここに着てから思いもかけないことばかりだ。吸血鬼と寝たりよ」
ニヤとベルナドットは右の頬を持ち上げる。
「何かの間違いで吸血鬼に子供ができたっておかしくねェだろ?」
セラスが目を丸くする。
「嬢ちゃんの子なら面白そうだしな」
「ベルナドットさん・・・・・・・・・・・」
名を呼んだきり、言葉に詰まったセラスの顔が不意に固まった。
セラスの中で大人しくしていたベルナドットの分身が、再び大きくなるのを感じたからだ。
「ガキこさえる話してたら、興奮してきた」
悪いな、とベルナドットは繋がったまま、セラスをベッドに押し倒す。
「もし本当にできたら、俺が責任もってボスから産休もぎとってやっからよ」
そう言って、ベルナドットは悪戯な笑みを顔に乗せた。
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